Le Mans(ル・マン24時間レース)で見た中国の躍進

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■歴史は塗り直される壁

先週行われた、ル・マン24時間耐久レースで、ジャッキー・チェン率いるチームが、クラス優勝した。アジアチームで日本以外がル・マンの優勝旗を手にしたことはないはず。クラス優勝とはいえ、ゴール約1時間前までは総合1位を快走し、開発費100億円以上と言われる2位のポルシェワークスマシンを2週遅れさせての独走状態だった。

結論から言えば、後半で生き残ったポルシェワークスマシンが超ハイペースで追い詰め抜き去って優勝だが、その時のポルシェワークスはプライドを掛けた必死の展開だった。ル・マンの常勝チームがゴール直前に猛追したシーンは最近はあまり見かけない。そもそも、ジャッキーのチームとポルシェrワークスはカテゴリーが違い同等のマシンスペックではない。さらにジャッキーチームは、ワークスよりスペックでは劣るが同じポルシェでの参戦だ。ワークスポルシェとしては、それで負けてしまっては許されない展開だけに社運をかけたなりふり構わないすさまじいレースだった。

私達は今でも殆どの人が「中国」と聞くと、汚い、格下、ずるい、というイメージがほとんどではないだろうか。でも、それはもう間違った考えである。残念ながらいろいろな分野で日本と肩を並べる、もしくはレース中のポルシェと同じように抜き去られた分野も存在する。いつまでもあぐらをかいて優位な考えを持ち続けるのは、馬鹿である。中国は、発展途上国としての立場と、アメリカと同等の意見を言える資金力と発言力を持ち、人口、国の広大な面積も含め、状況に合わせたメリットを最大限に活かし使い分けて国家権力を強くしている。ずるいという気持ちを抱く人もいるだろうけど、今の世の中「ダマされる方が悪い」がまかり通っている時代だけに「したたか」と判断するのが懸命だろう。こうして得たあらゆるメリットを産業に活かしているのも特徴であり、「技術立国」として人々が注目しやすい公の場で世界に結果を示してきている。レースが終わって中国の国旗が振られているのを見て本当に世界は動いていることをすごく実感した。たぶん、戦後の日本が高度成長期時にレースで言えば、バイクレースでは最高峰のTTマン島のオートバイレースで誰もが無謀だという言葉を振り切り、本田宗一郎氏が率いたホンダが数年後に優勝したときの諸外国の方たちの「震撼」を今私達がその立場なんだろうと実感した。オートバイの世界では、それ以来、バイクレースではホンダは今でも一目置かれた存在である。

今回のル・マンの出来事は、あまり報道されていないし気に留めない人がほとんどだろうけどいづれこの先、「アジアにおける転換期の象徴」のエピソードとして語られるんじゃないかな。コメンテーターの人が総合1位を走っている時には解説に覇気がなかったのがすごく印象的だった。